研究概要 |
粘土の骨組構造を形成するのに寄与する年代効果の1つとして酸化鉄によるセメンテーションが重要である。ここでは,カオリナイト-酸化鉄複合体の懸濁液のビンガム降伏値がpHによりどのように変化するかを調べ,酸化鉄と粘土粒子との相互作用を電子顕徹鏡写真による観察,比表面積及びゼータ電位の測定値により評価した。 無水塩化第二鉄(FeCl_3)から作成した酸化鉄をpH3に調整後,pH3のNa飽和のカオリナイトと混合して懸濁液を作成した。この懸濁液のpHを数段階に調節して,形態観察,ビンガム降伏値,比表面積ゼータ電位の測定を行った。また,酸化鉄をpH9.5に調整後,pH9.5のNa飽和のカオリナイトと混合して懸濁液を作成し,同様の項目について観察,測定を行った。 電子顕微鏡写真から,酸化鉄とカオリナイト粒子の間の結合状態は,複合体の初期pHに影響されることがわかった。即ち,初期pH3に調製した複合体中の酸化鉄は,pHを9.7まで上昇させても粘土粒子の面上に保持される。一方初期pH9.5で調製した複合体中の酸化鉄は,等電点(約pH8)以上のpHでは粘土粒子とは独立している。PH8以下では,一部の酸化鉄は粘土粒子の面上に吸着され酸化鉄が完全に粘土粒子と結合するためにはpHを4以下に下げることが必要である。 酸化鉄のビンガム降伏値への影響は,複合体中の酸化鉄が粘土表面との結合状態により異なる。粘土粒子と結合していない酸化鉄は,粘土粒子の表面に沈着している酸化鉄よりビンガム降伏値を高めるのに寄与する。これは粘土粒子と結合していない酸化鉄の電気的な粒子間架橋によると考えられる。粘土粒子表面に沈着した酸化鉄による粒子間架橋の可能性は非常に低い。
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