養液栽培で多く用いられるロックウール培地に代わる有機質培地の利用を試み、有機質培地の栽培特性を明らかにするとともに、養液の循環再利用をめざした栽培植物の根圏環境制御システムの構築を行った。有機質培地としてスギ、ヒノキ樹皮の混成材を圧縮成型したものを組織片の大きさにより分け試験区として、ロックウール培地を対照区として、(1)培地の三相分布、(2)吸水時の密度、含水率、(3)底面吸水方式によるトマト栽培実験、(4)コマツナの栽培実験を行った。特に有機質培地は裁断された組織片の大きさを揃えることが困難であるため、この組織片の大きさが培地の物理特性及び栽培に及ぼす影響を検討した。 1.樹皮培地は、組織の大きさが1mm未満の割合が増加するにつれ固相率、液相率が増加し、気相率が減少した。ロックウールと比較すると、樹皮培地はpF0.9付近までは組織の大きさが1mm未満の割合が80%以上の場合は液相率でほぼ同じであるが、他の試験区はいずれも液相率が低く、pF1.0以上ではロックウールに比べ液相率が著しく低下した。 2.トマト栽培期間中の給液量は、1mm未満の割合が60%の区において最も多く、栽培終了時のトマトの成育においても1mm未満の割合80%、60%、40%の区がロックウールと比べて成育に差異がなく、トマト栽培では1mm未満60%区がロックウールの代替培地として十分利用可能であった。 3.コマツナの栽培においては、培地高さ20cmでは保水力のあるロックウール区と組織の大きさ1mm未満区が成育が良好で、液相率の低い1mm以上区は特に初期の成長が遅れた。培地の高さ10cmの第2回実験ではロックウール区は生育不良で、液相率と気相率のバランスが合う無選別区が安定した成長を示し、培地高さ10cmでの栽培は市販の無選別培地で十分対応可能であった。
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