α-スチレンモノマー(MSM)および同ダイマー(MSD)を溶剤として用いて発泡スチロール(EPS)の溶解量や溶解速度等の減容特性を把握し、MSMおよびMSD添加によるEPS熱分解過程の低分子化効果、EPS熱分解再生油の粘性、燃料特性、燃焼特性などの基礎データを取得した。 前年度の結果より、MSMまたはMSDを所定のモル比で添加したEPSを、冷却管、窒素導入管および温度センサを装着した熱分解装置に投入し、熱分解温度200℃で攪拌しながら約2時間熱分解処理し、再生油(Mn=3800)を得た。再生油の燃焼試験に先立ち、標準ポリスチレン(Mn=4400)をモル比1:1の割合でMSMに溶かした溶解油について希釈倍率を変え、油温と粘度との関係を求めた結果、市販の重油程度の粘性を得るためには、Mn=4000程度の再生油をMSMにより重量比約4倍の希釈が必要と判明した。燃焼実験では、再生油を4倍に希釈し、灯油用ガンタイプバーナー(燃焼量1.8L/h)を用いて燃焼させ、灯油、MSMと比較した。火炎の温度は、MSMが最も高く、灯油と再生油には差が見られなかった。また、目視の結果、MSM、再生油の火炎が灯油より白色味を帯びていたが、火炎の状態は安定し、燃焼ガスはほとんど無臭であった。 燃焼室付の燃焼装置を用いて燃焼ガスの組成を測定した。窒素酸化物(NO_x)濃度は、灯油約80ppmに対して再生油約70ppmであり僅かに低い値であった。一酸化炭素(CO)濃度は、灯油が3〜4ppmであるのに対し、MSMは8〜10ppm、再生油は6ppmと約2倍の値になった。二酸化炭素(CO_2)濃度は、灯油、MSM、再生油の順に増える傾向にあるが、ほぼ9〜10%であった。酸素(O_2)濃度は、再生油が約8%と低いが、その差は僅かであった。これらの測定結果から、再生油は灯油に比してCO濃度が僅かに高くなるものの、その他はほぼ灯油の燃焼排気のガス組成と同程度であり、灯油と同程度の燃焼状態が維持されていると考えられる。また、CO濃度については、バーナーの燃焼状態を調整することによって低下させることが可能と思われる。
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