研究概要 |
今年度の成果は以下のとうりである。 1.これまで,マダイなどの自発摂餌要求センサとして,稚魚から成体までの広い成育レベルで光ファイバーセンサが利用できることを実証してきたが,その発光色には赤色光を使用してきた。そこで,今回,魚の視感度外となる近赤外光を用いて摂餌リズム,学習過程を赤色光の場合と比較検討した。その結果,摂餌リズムには,学習初期を除いて大きな差異は認められなかった。成長に関しても,水槽毎のバラツキがあったものの,大差は認められなかった。 2.自発摂餌要求センサとして光ファイバーセンサの耐久性・信頼性を高めるため,ガラス試験管を用いてファイバー先端部に海水が浸入しないよう完全防水処理を施した。その結果100日間の連続使用後も全く損傷もなく,センサ出力も変化しないセンサとすることができた。 3.日本での自発摂餌の実績の少ないヒラメを対象として,摂餌要求センサとしてプル型センサを用い,様々な先端部,センサ設置深さを試行し,自発摂餌の可能性を探った。その結果,数ケ月から半年に及ぶ長い月日を同一水槽で飼育したヒラメで自発摂餌に成功した。しかし,水槽移動,体重測定,水槽環境の変化に対して大きなストレスを受けるのか摂餌リズムが急変し,場合によっては,自発摂餌をしなくなる例も見られた。ヒラメの場合,自発摂餌の開始条件として飼育環境に対する平穏な馴化期間が重要な要素であることが示された。センサの設置深さによって,摂餌リズムが異なる傾向を示した。 4.自発摂餌センサの入力から実際に餌が給餌されるまでの時間(応答時間)を変えることのできる自発摂餌ネットワークシステムを構築し,タナゴを用いて応答を変化させた場合の自発摂餌学習過程を調べた。システム設置後,応答時間が10秒程度までは学習過程の大きな影響はなかった。しかし,20秒とした場合には,自発摂餌の行動が低下する例が見られた。
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