地球温暖化が危惧される中、森林の炭素吸収機能が注目され、そこに新たな経済的価値が見出されされつつある。特に熱帯泥炭湿地林は、樹木が生態学的極相状態になっても炭素を正味に吸収し続け、泥炭として蓄積する機能を持っており、通常の森林以上の価値を持つ可能性がある。 本研究は、熱帯泥炭湿地林が持つ炭素吸収能の主構成要素である泥炭中の炭素蓄積速度に注目し、その簡易な測定方法を提案するものである。本方法は1)現場における深さ方向の乾燥密度分布をPeatProbeにより測定する、2)特殊なサンプラーで採取した撹乱試料から炭素含有率を求める3)前記の試料から蓄積年代の深さ方向の分布を求めるの3段階からなる。 本年度は、1)室内実験によりPeat Probeに対する温度と間隙水の電気伝導度の影響および測定精度の検討、2)サンプラーの改良、3)タイの熱帯泥炭地における本方法の適用の3点について研究を進めた。その結果、PeatProbeの温度依存性は無視できるが、電気伝導度が70mS/mを越えるあたりからばらつきや誤差が大きくなることがわかった。また、Peat Probeの測定値は10%程度の誤差を持ち、センサーから半径10cm以内の領域の平均的な値になることがわかった。さらに、タイの熱帯泥炭地に本方法を適用したところ、炭素蓄積速度を1.0tC/ha/yearと推定することができた。 次年度は本方法による測定値の妥当性を検討する。
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