| 研究概要 |
園芸生産場面において急速に普及しているセル成型苗では移植の遅れにより移植後の生育が不良となりやすい.そこで,本研究ではセル成型苗の移植後に形成される根系の構造を調べ,移植後の苗の生育を改善する方法を開発することを目的とし,本年度は移植後に根鉢から周囲に伸展する根の分枝構造を観察した.まず,キャベツの種子をセル成型トレイに播種して人工気象器内で発芽・育苗を行い,移植適期苗および移植適期を逸した老化苗を培土を詰めたポットに移植して生育させ,一定期間の後に根を掘り出して根系構造を比較した.その結果,移植適期の苗では主根あるいは1次側根と思われる数本の根が著しく伸長する一方でこれらの根から2・3次側根と思われる細く短い根の発生がみられたのに対して,老化苗では根鉢から細く短い分岐根が大量に発生することがわかった.すなわち,苗の老化が進むと移植後に根が分岐する傾向が強くなり,根系全体の根量は遜色ないものの,根の伸長力が抑えられて土壌中の深い部分への根系分布が困難となった.セル成型苗が根鉢の中に多くの分岐根を持つことと移植後の分岐傾向が強いこととの関連をしらべるため老化苗の根鉢を部分的に切除することによって側根を少なくして移植した.その結果,移植直後の発根数は少ないものの長く伸長して細い分岐根を発達させた根が発生し,移植後の根系構造を改善する可能性が示された.しかし,このような乱暴な処理では植え傷みによる生育停滞が避けられない.したがってケミカルコントロールなどの安全かつ効果的な方法が必要となり,これを開発するために多様な育苗条件で大量の個体の根系解析をすることが必要となった.そこで,デジタルカメラ(購入設備備品)を用いて取得した根系画像を解析するための手法やソフトウェア設定等の処理技術について検討した.その結果,新たに多数のサンプルを迅速に解析することができるようになった.
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