安比牧野は放牧により長期間にわたりシバ型草地が維持されてきたが、畜産農家の減少、農作業の機械化に伴い1985年ごろ放牧が休止され、その植生が大きく変化している。このような植生の変化をリモートセンシングをもちいで解析するうえで、地上での調査によって得られたデータが非常に重要である。そこで、安比牧野における1981年と2002年の植生調査の結果を比較し、放牧休止による実際の植生の変化を調査した。その結果、1981年から2002年にかけて、シバやその随伴種の被度が減少し、ワラビやハルガや被度の顕著な増加やズミの大型化が起きており、植生が荒廃していることが明らかとなった。 牛肉の輸入自由化後、放牧頭数の減少による公共牧場、特に奥山等の条件不利な牧場の運営が困難になり、急僕による荒廃が拡大してきている。リモートセンシングは、直接現地に行かなくても解析が行えるという特長があり、公共牧場の実態の把握に適した技術といえる。多時期人工衛星データの解析により、公共牧場の植生の変化を調査した。解析には、1985年6月16日、同年10月22日、1996年5月29日、1997年10月23日にそれぞれ観測された岩手県周辺のランドサットTMデータを用いた。調査したすべての公共牧場において、人工草地が減少し、自然草地が増加していた。これは利用率の低下によって荒廃が進んでいる公共牧場の実態に沿ったものであるが、草地内の誤分類の問題もあり、今後さらに検討する必要がある。1985年6月16日のほうが1996年5月29日よりもNDVIは高かったが、これは画像取得日が3週間近く離れており、その間に植物が生長したためと考えられる。秋画像では、NDVIに年次による違いはあまり見られなかった。
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