1999年に打ち上げられた国際協力プロジェクト「EOS計画」に基づく地球観測計画の初号機Terraに搭載された高性能光学センサASTERは、空間分解能が15mと高く、観測バンド数も14バンドあり、農林、資源、気象、環境など多方面への利用が試みられている。本年度は、このASTERデータと、これまで利用されてきた空間分解能が30mであるLandsat TMデータを用いて、地上被覆分類と植物体現存量の推定を行い、衛星間の性能の違いを明らかにした。また、多年度にわたる収量を推定可能な汎用モデルを重回帰分析とニューラルネットワークの手法を用いて開発し、その推定の推定能力の差と解析に要するデータの特性を明らかにした。 観測日が同じTMデータとASTERデータを用い、最尤法による教師付き分類を行った結果、TMデータではトレーニングフィールド全体、牧草地と飼料畑、およびそれ以外の平均分類精度が、それぞれ98.3%、99.0%、および95.0%であった。一方、ASTERデータでは、トレーニングフィールド全体、牧草地と飼料畑、およびそれ以外の平均分類精度が、それぞれ98.8%、98.7%、および99.5%となり、TMデータに比べ高い精度を示した。特に、牧草地境界のクラスではTMデータが91.7%の精度で分類したのに対し、ASTERは99.0%の精度で分類した。これは、牧草地境界のクラスの面積は非常に小さいため、空間分解能が30mであるTMデータでは、牧草地境界のみを抜き出すことが困難であり、牧草地境界と他のクラスが混じった混合画素を多量に発生させてしまうためと考えられる。 TMデータとASTERデータを用いた草地の収量予測精度の比較として、収量を目的変数、各バンドの分光反射値と植生指数(NDVl、RVl)、衛星観測から刈取りまでの日数およびその2乗、積算気温、有効積算気温、平均気温を説明変数とした重回帰分析を行った。予測精度において、TMデータを用いたものは決定係数が0.85であったのに対し、ASTERデータを用いたものは0.92と高い予測精度を示した。空間分解能が30mであるTMデータでは、圃場ごとの分光反射データの作成時に頻繁に混合画素が発生し収量予測の精度を下げているが、空間分解能が15mであるASTERデータではTMデータほど混合画素が発生しないために、収量予測精度がTMデータを用いたときよりも高い結果を示したと考えられる。
|