研究概要 |
岩手県内にある46カ所の公共牧場について、それぞれの牧場開設年、牧場面積、牧草地面積、利用方法、利用家畜の種類を調査した。そして、それらの牧場の所在を2万5千分の1の地図で確認し、その所在地の地図画像を抜き出した。また、同様にランドサットTMの1996年5月29日の画像から、対象とする公共牧場の画像を切り出した。そして、地図とランドサット画像との重ね合わせにより、草地の分布域を表す画像を作成した。一方、現地調査により、利用が減少してススキなどの野草が侵入している草地を確認した。そして、その結果をもとに、最尤法による教師付き分類により、岩手県内でのススキの分布を調べた。このススキの分布と公共牧場の分布をもとに、公共牧場へのススキの侵入状況を明らかにした。その結果、日戸共有茅刈場、区界牧場,山谷川目牧野、住田牧場、夏虫山放牧場、新里牧場、金ヶ崎牧場、都南牧場などで、かなりの面積で牧草地にススキが侵入していることが明らかとなった。しかし、一部の牧場で、立枯れ状態の牧草とススキがうまく区別されていないことが判明した。この点に対しては、ススキの出穂期である秋のランドサット画像を使うことで改善されると考えられる。 安比牧野は放牧により長期間にわたりシバ型草地が維持されてきたが、畜産農家の減少、農作業の機械化に伴い1985年ごろ放牧が休止され、その植生が大きく変化しでいる。安比牧野における1981年と2002年の植生調査の結果を比較し、放牧休止による実際の植生の変化を調査した。その結果、1981年から2002年にかけて、シバやその随伴種の被度が減少し、ワラビやハルガヤの被度の顕著な増加やズミの大型化が起きており、植生が荒廃していることが明らかとなった。多時期人工衛星データの解析により、経年的なNDVIの変化が見られ、植生の変化を反映しているものと考えられる。
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