本研究は、最終的には単細胞タンパク質含有飼料の摂取量の低下要因を除くことによって単細胞タンパク質がニワトリ用飼料原料としてより一層利用されるようになることを目指して、先ず(1)飼料摂取量の低下をもたらす要因がプリン化合物であるかどうかを明らかにし、続いて(2)その低下をもたらす機構を解明することを目的とした。得られた結果を要約すると次のようになる。 1)筋肉内へのアデニン投与は投与後1時間までの飼料摂取量を有意に低下させた。しかし、静脈内や頚動脈内へのアデニン投与は飼料摂取量の低下をもたらさなかった。 2)10%RNA添加飼料と0.96%アデニン添加飼料の給与は、中雛でもニワトリ雛ですでに報告されている飼料摂取量の低下と成長の遅滞を引き起こした。 3)飼料中のRNAはそ嚢で33.4%も分解され、回腸でのRNA消化率は93.4%と非常に高いことが明らかになった。このとき低pHと体温で自己分解した遊離アデニンがそ嚢内に出現した。遊離アデニン量はそ嚢内が最も多く、消化管下部に行くにつれ減少した。 4)10%RNA添加飼料給与時に門脈血中に出現するアデン量は、0.96%アデニン添加飼料給与時に出現するアデニン量の35%にしか相当しなかった。これは、10%RNA添加飼料給与時に遊離するアデニン量が0.34%アデニン添加飼料給与時の量に等しいことを示唆している。 以上の結果から、給与したRNAは、給与したRNAの消化に由来して増加したアデニンによって飼料摂取量を低下させるのではなく体内のPRPPの枯渇のような他の要因によって引き起こすと結論できる。PRPPはニコチン酸アミドの合成に必須であるから、ニコチンアミドの体内における枯渇がRNA給与時の飼料摂取量の抑制に関与しているかもしれない。
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