木曽馬を用いて、妊娠、分娩、哺乳、さらには離乳へと経過する各段階で、身体的・心理的な負荷の指標として心電図(A・B誘導、軽保定時)とテレメーターによる夜間の心電図記録を用いた心拍変動パワースペクトル解析(2時〜4時の立位安静時)による自律神経機能の推定を行った。夜間のテレメーター記録から、妊娠経過に伴い心拍数(HR)の増加、HF成分の減少、LF/HFの増加が、分娩10日目でHRの減少、LF成分の減少、LF/HFの減少が見られた。その後90日目までHR、LF成分、HF成分、LF/HF、CV_<R-R>は増加した。軽保定の心電図記録から、分娩後1〜2カ月間のHRは漸増し、その後漸減した。T波の電位の代数和は分娩当初では陽性成分優勢を示し、その後陰性成分優勢となり増大した。離乳当日の夜間立位安静時において、CV_<R-R>、LF成分、HF成分は減少し、LF/HFは増加し、離乳5日目には離乳前の値を示した。馬では、妊娠進行に伴う母体の身体的な負荷、分娩後に一過性の負荷からの開放、また哺乳期の身体的な負荷、さらに離乳時の心理的なストレス状態が、心拍数、T波の電位、心拍変動パワースペクトル解析の各データから評価された(日本畜産学会第98大会発表)。 一方、吸血飛来昆虫が放牧牛の身繕い行動(頭振り、耳振り、脚舐め、体舐め、皮膚の振戦、脚上げ、尾振り)、さらに食草行動(食草時の顎運動回数)に及ぼす影響について、データロガを用いて6月〜10月まで信大農学部附属農場にて調べた。身繕い行動は6月、10月に比較して7、8、9月で有意に増加した。食草時の顎運動回数は頭振り行動の出現により著しく減少した。牛に付着した飛来昆虫数と身繕い行動の発現頻度には個体差が見られた。また尾振り回数記録用のデータロガを開発し、その性能を実証した(平成13年日本草地学会大会発表)。
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