1、夏季放牧牛は飛来昆虫に対し頻繁に付着昆虫を追い払うための様々な身繕い行動を行う。その結果として充分な休息および食草行動が妨げられている。従って、飛来する吸血昆虫をはじめとする各種昆虫は放牧牛にとってストレッサーになっていると考えられる。そこで、飛来昆虫が最も多い7月下旬から8月下旬に、対照区(殺虫剤非散布)と実験区(殺虫剤散布)を設定して、飛来昆虫が放牧時の食草行動、昼間の休息行動、心拍数に及ぼす影響を調べた。殺虫剤の散布により対照区では飛来昆虫はほとんどいなかった。昼間の時間制限放牧時のFeeding station当たりの滞在時間は対照区に比べ実験区で有意に長く、飛来昆虫が食草行動を阻害していることが明確となった。また放牧地での横臥休息・反芻時間も対照区に比べ実験区で有意に長いことが明らかとなった。さらに昼間の繋留時における立位休息時の平均心拍数は実験区に比べ対照区で有意に高く、心拍数と身繕い行動の出現回数との間に有意な正の相関が見られた。これらの結果から飛来昆虫が放牧牛の維持行動(食草、休息)及び心拍数に及ぼす影響が明らかとなった。2、また木曽馬を用いて、基礎的データとして一般的な飼育形態での夜間の姿勢(立位、伏臥、横臥)、体温(膣温)及び心電図を記録した。その結果、深夜から早朝に立位から伏臥、横臥への姿勢変化が繰り返し出現し、この変化に伴い体温と心拍数が増減した。横臥時では心電図の基線に混入していた筋電図が消失し、更に頻脈と徐脈が混在して出現したことから、横臥時にレム睡眠に入ることが示唆された。夜間の心電図を用いて心拍変動パワースペクトル解析を行ったが、各パラメーターから自律神経活動を推定することができなかった。また第2度房室ブロックを多発する個体では、伏臥、横臥を反復する時刻にブロック数が明らかに減少しており、この時刻に自律神経活動が不安定になることが示唆された。
|