熟成中の食肉軟化に寄与する筋原線維タンパク質パラトロポミオシンは、筋節A-I接合部でコネクチンに結合し局在することを示唆している。両タンパク質の結合を明確にし、さらにパラトロポミオシンが死後筋肉内の高濃度Ca^<2+>で遊離する仕組みを明らかにするため、鶏コネクチン上のパラトロポミオシン結合部位の構造決定を目的とした。 パラトロポミオシン結合部位特定のため、コネクチンのnative formであるβ-コネクチンを精製し断片化の酵素消化条件を検討した。SDS-PAGE法で最適な消化条件を見出し、二次元電気泳動法でβ-コネクチン分解物のペプチドマップを作成後、ビオチン化パラトロポミオシンおよび抗コネクチンモノクローナル抗体をプローブとして、A-I接合部領域でパラトロポミオシンと結合する43kDa断片を特定した。さらに43kDa断片のN末端アミノ酸配列をYQFRVYAVNKと決定し、既知のヒト心筋コネクチンドメイン構造からA-I接合部領域に相当するI-51ドメイン(7556〜7565AA)中に高い相同性を認めた。43kDa断片は概ね4個のドメイン(I-51〜I-54)にわたり構成されていると考えられ、これらのドメインはA-I接合部近傍のFibronectin-3タイプドメインの特徴的並びの領域に一致した。 またβ-コネクチンのN末端領域を構成し、A-I接合部領域を含む400kDa断片の分離・精製を行った。すなわち筋原線維をキモトリプシンで限定分解後の粗抽出物を、イオン交換クロマトグラフィー法、ヒドロキシアパタイトアパタイトクロマトグラフィー法、および超遠心分離法を行い、400kDa断片を精製した。今後は、400kDa断片を材料とし、より詳細なコネクチン上のパラトロポミオシン結合部位を明らかにするとともにコネクチンからのパラトロポミオシン遊離機構の解明を進めていく予定である。
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