本研究では、マウスおよびウシの卵胞内卵子の体外成熟、体外受精、体外培養について細胞遺伝学的見地から検討し、細胞遺伝学的に正常な胚の効率的作出に繋がる卵胞内卵子を用いた体外受精システムを確立することを目的としており、本年度は、以下のような実験を行って成果を得た。 1.マウス卵胞内卵子の体外成熟後の減数分裂時における染色体異常の出現率について 過排卵処理のhCG投与後9、10、11、12時間に卵胞内卵子を採取し、hCG投与後合計16時間となるよう4-7時間体外で成熟培養し、染色体標本を作製した。9および11時間区で減数第1分裂中期(M I期)の染色体像が1.3%、5.0%観察されたが、その他は全て減数第2分裂中期(M II期)染色体であった。染色体異常の出現率を調べたところ、ほとんどが正常な染色体数nであった。(本研究結果は、第93回日本繁殖生物学会大会で発表された。) 2.ウシ卵胞内卵子の体外成熟培養条件と染色体異常の出現率との関連について 卵胞内卵子の体外培養時間を22、26および30時間に設定し、卵子を体外成熟培養後、染色体標本として観察した結果、M II期にある卵子の割合は、26時間区(95.8%)、30時間区(96.6%)において22時間区(86.4%)に比べ有意に高かった。M II期染色体の正常性の分析を行ったところ、染色体数が正常のnより増減する異数性卵子の出現率は16.4〜22.4%であり、培養時間が長くなるにつれて異常率が低くなる傾向があったが有意ではなく、また正常数の2倍である2nの2倍体卵子の出現率は4.7〜5.6%であり、各培養時間区間に有意な差は認められなかった。卵胞内卵子の適切な培養時間は、加齢を避けるということから26時間が適当であると考えられたが、さらに詳細な検討も必要と考えられる。(本研究結果は、第93回日本繁殖生物学会大会で発表された。)
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