研究概要 |
核移植によってクローン動物を作製するためにはドナー核のリプログラミングと再構築後の胚発生を支持する除核未受精卵が必要で、本研究はこの除核未受精卵の保存技術の開発を通し、ウシ及びウマにおけるクローン作製技術を効率化しようとした。得られた結果を以下に要約する。(1)ウシ除核未受精卵の耐凍性は、体外受精由来胚の耐凍性を改善する効果のあるリノール酸アルブミン(LAA)を体外成熟・除核・活性化誘起といった一連の除核未受精卵の調製過程の全培養液に添加することで増強された(Hochiら、J.Vet.Med.Sci.誌、2000)。(2)最近になってウシ卵母細胞の有効な超低温保存法として超急速冷却行程を特徴とするガラス化保存法が注目されている。加温速度に関わりなく冷却速度を毎分3,000〜5,000℃にするような保管容器を選ぶことによって、非冷却区と遜色のない体外受精成績を得た(Hochiら、Cryobiology誌、2001)。(3)受精卵の体外作出システムが確立されていないウマにおいて、ハムスター裸化卵子への精子侵入能に基づいて、0.1μMイオノフォアA23187、2分間というウマ精子に有効な受精能獲得条件を決定した(Matsukawaら、J.Reprod.Dev.誌、2002)。(4)このイオノフォア処理を顕微授精(卵細胞質内精子顕微注入法:ICSI)に供試する前のウマ精子に施し、65%の正常受精卵率を得るとともに体外培養によってICSI由来のウマ胚盤胞を得ることにも成功した(Matsukawaら、第28回国際胚移植学会でポスター発表、2002)。
|