浸透圧受容体が脳に存在し、浸透圧の上昇などを感知して抗利尿ホルモンあるいはアンギオテンシンIIなどを分泌を刺激することは、概念的には古くから言われているが実体は未だ明らかではない。 アクアポリン(AQP)は細胞膜にある水を通過させるチャンネルであり、様々な器官に存在する。28kDaのチャンネルを形成するタンパクが初めてAQPとして同定された。AQP4は、広く体の中で分布するがそのmRNAの発現は中枢神経では他の組織に比べ10倍以上高い。in situハイブリダイゼーションの結果、ラットの脳で脳室周囲器官やSON、PVNなどの存在した。AQP4のこの分布は、何らかの生理的な機能を示唆する。鳥類においては、AQPが現在までにどのタイプもクローニングされていない。申請者は、AQPを鳥類で最初にクローニングするとともにこの遺伝子発現をしらべ、浸透圧調節との関係で生理的作用を調べるために本研究を行った。 ニワトリの視床下部からtotalRNAを抽出し、そのtotal RNAを逆転写酵素によりcDNAを合成した。このcDNAを用いて、PCRを行った。プライマーは、ヒトのAQP4から作成した。このPCR産物をTAベクターにサブクローニングし、シークエンスした。 艀化後2日齢のヒヨコを一日絶水したのち、脳を取り出しtotal RNAを抽出し、RT-PCRにより絶水した場合とコントロールにおける視床下部におけるAQPの遺伝子発現を比較した。 約368bpのPCR産物の塩基配列が決まり、この塩基配列をホモロジー検索したところ、ヒトやマウスのAQP4と非常に高い相関が得られた。したがって、このPCR産物は、ニワトリにおけるAQP4であると考えられた。まだ、塩基配列が一部しか決められていないので、現在RACE法を用いて5'と3'末端の塩基配列の決定を進めている。AQP4の遺伝子発現は、絶水することで遺伝子発現が高くなる傾向がみられた。したがって、このクローニングされたAQP4が、ニワトリにおいて何らかの浸透圧調節に関与している可能性が示唆された。
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