研究課題/領域番号 |
12660254
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長尾 恭光 京都大学, 農学研究科, 助手 (80303874)
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研究分担者 |
徳永 智之 独立行政法人・農業生物資源研究所, 発生分化, 室長(研究職)
南 直次郎 京都大学, 農学研究科, 助手 (30212236)
今井 裕 京都大学, 農学研究科, 教授 (10303869)
米川 博通 東京都臨床医学総合研究所, 副所長(研究職) (30142110)
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キーワード | ES細胞 / ミトコンドリアDNA / 精子受精能 / 生殖系列キメラ / キメラ形成能 |
研究概要 |
本研究では同胞異種のmtDNAが発生分化および繁殖に与える影響を調べるため、近交系C57BL/6J(B6)と同胞異種マウスMus.spretusのmtDNAを持ち核内はB6のミトコンドリアコンジェニックマウスB6mt^<spr>から二つの異なるmtDNAタイプのマウス胚性幹細胞(ES細胞)株を樹立し、4倍体マウス胚を用いてES細胞由来個体の作製と生殖系列キメラの作製を試みた。B6のES株及びB6mt^<spr>のES株はともにテトラプロイド法により個体形成(出生後死亡)できるキメラ形性能を持つが、ICR系マウスとキメラを形成した場合はB6mt^<spr>のES細胞だけが生殖系列キメラと成った。そこでB6のES細胞の生殖細胞への分化を視覚的に観察するためGFPマウス(B6・GFP)からES細胞を樹立しICR系マウスとキメラ形成させた。すると、いくつかのキメラ個体の精巣には蛍光が観察された。また生殖系列キメラが出来ないことが確認されているノックアウトES細胞をICR系マウスとキメラ形成させた場合にも、精巣および精巣上体尾部内の精子からノックアウトES細胞由来の遺伝子が検出できた。これらの結果から、B6mt^<spr>のES細胞だけが生殖系列キメラと成ったのは、キメラ形成能の差ではなく相対的な精子の受精能の差であると考えられた。そこでB6、B6mt^<spr>、B6の核DNAと亜種マウスMus.m.musuculusのmtDNAを持つB6mt^<spr>、ICR系マウス、BALB/C、BALB/Cの核DNAと亜種マウスMus.m.musuculusのmtDNAを持つBALB/C mt^<mus>の体外での精子受精能を比較した。結果はICR系マウス>B6mt^<spr>> B6>B6mt^<spr>>BALB/C> BALB/C mt^<mus>であった。相対的にBALB/C mt^<mus>の精子は受精能が低いのでES細胞とキメラ形成させた場合、生殖系列キメラになる可能性が高いと考えられた。ICR系マウスとキメラを形成した場合には生殖系列キメラにならなかったB6のES細胞とBALB/C mt^<mus>の受精卵(胚盤胞)を用いてキメラマウスを作製したところ、高率に生殖系列キメラが得られた。以上のことよりmtDNAは精子の受精能に影響を与えることが示唆された。
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