研究概要 |
ブタ卵巣の直径0.5,1.5および4〜6mmの3種の卵胞から採取した,直径105μm(減数分裂再開能を持たない),110μm(第一減数分裂中期まで減数分裂を進めることができる)および120μm(第二減数分裂中期へと成熟可能)の卵母細胞を培養し,以下の結果を得た。 1.各発育段階にある卵母細胞のCdc2キナーゼおよびMAPキナーゼの変化を,ウエスタンブロッティングおよび[^<32>P]γ-ATPを用いたキナーゼ活性測定によって調べた。発育を完了した卵母細胞では,成熟過程で両キナーゼが活性化されたが,減数分裂を再開しない発育途上の卵母細胞では両キナーゼとも活性化されず,また,第一減数分裂中期で停止する卵母細胞では,Cdc2キナーゼは活性化されるもののMAPキナーゼの活性化は不完全であった。ウエスタンブロットでは,各発育段階の卵母細胞のMAPキナーゼは活性化と平行したリン酸化型への変化を示したが,成熟能力を持たない卵母細胞においてさえ,成熟能力を持つ卵母細胞と同様にCdc2キナーゼの制御サブユニットであるcyclin B1が合成され,この段階の卵母細胞には触媒サブユニットのCdc2の抑制的リン酸化による不活性化機構が存在し,Cdc2キナーゼの活性化とそれに引き続く減数分裂の再開が抑制されることが示唆された。 2.第二減数分裂中期へ成熟する直径120μmの卵母細胞では,活性型のMAPキナーゼは第一減数分裂の凝縮した染色体の周辺に認められ,第一減数分裂後期から終期にかけて紡錘体の中央部へと移動した。また,第一減数分裂中期の活性化したMAPキナーゼをU0126で阻害すると,染色体の分離が阻害された。これらの結果から,MAPキナーゼは,第一減数分裂から第二減数分裂への移行に強く関わっていると考えられた。
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