研究概要 |
ブタ卵巣から直径0.5〜1.0mm,1.5mmおよび4〜5mmの3種の卵胞を採取し,それぞれの卵胞から減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞,第一減数分裂中期まで減数分裂を進めることができる直径110μmの卵母細胞および第二減数分裂中期へと成熟可能な直径120μmの卵母細胞を取り出して培養し,以下の結果を得た。 1)減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞を含むコラーゲンゲルに包埋し,10ng/ml FSHと2mMヒポキサンチンを添加した培養液中で7日間培養した。ヒポキサンチン添加の有無に関わらず,約半数の卵母細胞は生存しており,平均直径は発育完了時の大きさの120μmへと増加した。また,卵母細胞はいずれも卵核胞期のままであった。体外で発育させた卵母細胞を成熟培養したところ,ヒポキサンチン添加培養液中で発育した卵母細胞では減数分裂を再開する卵母細胞数は有意に増加し,また一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。 2)直径120μmの発育を完了した卵母細胞をタンパク質フォスファターゼ1/2Aの阻害剤であるオカダ酸あるいはカリキュリンAで処理すると,Cdc2キナーゼの活性化が起こらないまま急速にMAPキナーゼ活性が上昇すること,また,培養6時間後には第一減数分裂中期様の核相へと移行することが明らかとなった。 3)第一減数分裂中期で停止する卵母細胞は,Cdc2キナーゼを活性化することができるが,MAPキナーゼを活性化する能力は低い。この卵母細胞をタンパク質フォスファターゼ1/2Aの阻害剤で培養開始時から1時間処理すると,卵母細胞のMAPキナーゼ活性は上昇し,一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟することが明らかとなった。
|