研究概要 |
ブタ精子を凍結前に曝す希釈液(Hulsenberg VIII)およびBF5,225,290,420,510,580,660mOsm/kg)の浸透圧を変化させ,精子内部の脱水とその凍結融解後の精子細胞膜の正常性,先体の完全性,運動性との関係について検討した.その結果,低張液で処理したブタ精子の凍結融解後の細胞膜の正常性,先体の完全性,運動性に比較して,高張液で処理した精子のそれらは有意に高い値を示した.特に420mOsmの希釈液が,凍結融解後のブタ精子の細胞膜の正常性,先体の完全性,運動性を向上させることが示された(文献1). 細胞膜の流動性を向上させることが,高張液に曝したブタ精子の脱水を促進し,その結果耐凍能が向上するか否かを検討する目的で,精子細胞膜中のコレステロールを細胞膜から除去するhigh density lipoproteinを高濃度で有することが報告されているウシ卵胞液によりコレステロールを除去する処理が凍結融解後の精子の運動性に及ぼす影響について実験を行った.その結果,ウシ卵胞液に曝した後に凍結保存したプタ精子の融解後の運動性が,ウシ卵胞液濃度依存的に上昇することが明らかとなった.また,ウシ卵胞液に曝す時間は1.5時間が至適であることも示した(文献2). これらの本年度の研究結果から,細胞膜中のコレステロール濃度を低下させることにより膜の流動性が向上したブタ精子は,精子中の水が高張の希釈液の作用により脱水されやすいため,凍結融解後の細胞膜の正常性,先体の完全性,運動性がそれぞれ向上することを明らかとした.
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