近年、家禽のサルモネラ菌等による細菌感染が増加しているので、これの対策が急務となっている。卵の内部の感染は、食料の安全性としてのみならず、ヒナにも感染が及ぶため深刻である。個体とともに卵の感染を防ぐためには、卵形成の場である生殖器の免疫機能を強化する必要がある。本研究は、卵巣と卵管において、免疫担当細胞の機能を解析しながら、免疫機能を強化するための基礎的知見を得ることを目的とした。このため、(1)サルモネラ菌を投与してその動態を明らかにし、これに関連して起こる(2)卵管内の抗原提示細胞の動態を追究した。サルモネラ菌(sallmonella enteritidis)をウズラの腹腔内に投与し、菌の動態を免疫組織学的に解析した結果、同菌は卵巣や卵管の組織内に侵入することが見出された。サルモネラ菌(sallmonella paratyphi)の死菌を血液中に接種すると卵巣と卵管で免疫応答に重要な主要組織適合抗原複合体クラスII陽性細胞が増加することも見出された。これらの結果から、卵巣と卵管はサルモネラ菌が侵入する組織で、また、この侵入に対して免疫応答を発現できる組織でもあることが明らかになった。この実験に続いて、免疫機能が性ステロイドによって調節されることなどを解析すると、家禽の衛生管理やサルモネラ菌汚染を抑制する方策などの「安全な卵を生産するために必要な技術の改善」示すことができるものと期待される。
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