近年、家禽のサルモネラ菌等による細菌感染が増加しているので、これの対策が急務となっている。一般に、細菌に対する免疫応答は、まず、(1)抗原提示細胞が、主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHC-II)分子により抗原(細菌の分解産物)を提示する。(2)この情報がT細胞とB細胞を活性化し、(3)B細胞から免疫グロブリン(Ig)が分泌されて細菌は除去される。個体とともに卵の感染を防ぐためには、卵形成の場である生殖器の免疫機能を強化する必要がある。本研究は、卵管において、免疫担当細胞の機能を解析しながら免疫機能を強化し、安全な卵を生産するための技術を開発するための基礎的知見を得ることを目的として行った。その結果、卵管にはMHC-II分子とIgGのmRNAを発現する細胞が存在することを明らかにした。エストロジェンは免疫担当細胞のIgGmRNA発現細胞、TおよびB細胞を増加させるが、この増加は卵管と卵巣などのエストロジェンの標的組織で器官特異的に起こることも示した。移行免疫である卵黄IgYは強制換羽の後に増加するが、エストロジェンはこれの増加にも関わることを示した。そして、これらの生殖器の免疫機能は機能的にも働くことを、サルモネラ菌接種に伴いMHC-IIが増加するという実験結果により実証した。以上のことから、卵管は免疫応答を発現する器官であるが、この機能はエストロジェンによる影響を受けることを明らかにした。さらにサルモネラ菌の侵入に対してもMHC-IIを増加させて免疫に感染を防御する可能性を示すものである。
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