研究概要 |
ウシ凍結乾燥精子の卵細胞質内精子注入法(ICSI)を確立するため,(1)凍結乾燥における精子浮遊液(CZBまたはNa-EGTA緩衝液)の相違がICSI後の前核形成(PNF),精子アスター形成(SAF),胚発生に及ぼす影響,(2)凍結乾燥精子のICSI後の前核期におけるDNA合成,(3)凍結乾燥精子再水和後のdithiothreitol(DTT)処理がICSI後のPNF, SAF,胚発生に及ぼす影響,(4)再水和後のTriton X-100処理がICSI後のPNFとSAFに及ぼす影響,(5)活性化処理の相違が胚発生に及ぼす影響を調べ,以下の知見が得られた。 (1)CZB凍結乾燥精子のICSIでは卵割率は28%と低く,8細胞期に発生しなかった。一方,Na-EGTA緩衝液での凍結乾燥精子のICSIでは卵割率65%と有意に高く,胚盤胞への発生が観察された(6%)。CZB区とNa-EGTA緩衝液区のPNFに差はなかったが,SAFはNa-EGTA緩衝液で有意に高かった(39% vs.16%)。(2)新鮮精子と比べ凍結乾燥精子のICSIでは異常PNFが高かったが(18% VS.0%),DNA合成率に差はなかった。(3)0〜5mMのDTT処理でPNF, SAFに差はなく,卵割率と胚盤胞率は同様であった。(4)Triton X-100処理でPNFに差はなく(70% VS.61%),SAFは有意に減少した(33% VS.13%)。(5)5μM ionomicin5分と3時間後1.9mM DMAPの3時間活性化処理はICSI後4時間の7%エタノール5分の活性化処理と比べ,有意に高い卵割率(72% VS.59%)と胚盤胞率であった(11% VS.1%)。以上からウシ凍結乾燥精子のICSIによって胚盤胞胚の作出が可能であることが明らかとなった。
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