PGP9.5の免疫組織化学により、ウマの関節包と滑液嚢においてB型滑膜細胞を特異的に染色できることを示した。この細胞の分布、樹枝状突起を含む詳細な形態が明らかになり、さらにホールマウント標本を用いることで、より包括的な観察が可能になった。とくに、滑液嚢にもB型滑膜細胞が存在すること、多核の特殊な細胞であることを世界で初めて明らかにした。走査型電顕観察では、間質成分を除去するアルカリ浸軟法を導入し、滑膜細胞の立体構築の観察が可能になったことも特筆すべきことである。滑膜表面にはB型細胞の大小の突起網、限界膜様の裏打ちが構築されており、これまで想像されていた以上に、滑膜細胞が動的で、複雑な形態をとることが判明した。 滑膜細胞は上皮様構造をとるといわれてきたが、透過型電顕観察から、細胞間質には広い間隙が介在し、通常の上皮組織とは大きく異なっていた。しかし、特にB型滑膜細胞には、上皮を特徴づける基底膜様構造(ラミニンを成分とする)、デスモゾームなどの接着装置が発達し、上皮に類似した性格をもっていた。これらの構造物は、関節に加わる持続的で強い外力に対応して、後天的に付与されたのであろう。 上記の形態学的観察法の確立と導入により、関節の病理組織学的観察が容易になり、診断や病態解析の上でも大いに貢献するものと思われる。PGP9.5は関節液中にも存在するので、積極的に分泌されることが予想される。PGP9.5のアッセイ法を確立し、関節液中のPGP9.5を測定できることがわかったので、次年度には疾患馬のスクリーニングを行う予定である。
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