研究課題/領域番号 |
12660268
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
堀内 基広 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (30219216)
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研究分担者 |
田辺 茂之 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (70292092)
古岡 秀文 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (60238665)
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キーワード | プリオン / スクレイピー / 伝達性海綿状脳症 / ALYマウス |
研究概要 |
羊のスクレイピーやBSEなどの動物プリオン病は感染性プリオン病に分類される。これらの伝播は経口ルートが主な感染経路と考えられているが、自然感染経路における病原体の侵入門戸に関する知見は乏しい。近年、プリオンの体内伝播においてリンパ系組織の濾胞樹状細胞の関与が注目されており、扁桃、パイエル板、粘膜下リンパ濾胞など腸管付随リンパ装置が侵入門戸であることが示唆されている。一方、腸管には自律神経繊維、神経叢が密に存在しており、直接神経系へ侵入する経路も考えられる。この問題を明らかにするために、パイエル板など二次リンパ系組織を欠く変異マウス(alymphoplasitc,ALYマウス)に経口ルートを含む各種投与ルートでプリオンを感染させ、感染成立の有無、PrPScの蓄積状況を調べた。脳内接種においては野生型マウスであるC57BL/Jでは165±5日で、ALYマウスでは159±8日で死亡した。つまり、脳内接種では両マウスに感受性の違いは認められなかった。しかし経口ルートではC57BL/Jマウスでは307±7日で死亡したのに対し、ALYマウスでは現在まで(接種後400日)スクレイピーの発症は認められていない。神経線維特異的G蛋白質によるホールマウント免疫染色では、両マウスの消化管における神経線維の走行性および神経叢の出現頻度には大きな差が認められなかった。従って、経口ルートにおいては消化管付随リンパ系装置に侵入して、おそらくそこでプリオンの初期増殖がおこることが、最終的にプリオンが中枢神経系に到達するために必要であることが示唆された。現在、両マウスの各種組織、特に消化管と脾臓などのリンパ系組織におけるプリオン感染価を測定しており、またこれら組織における異常型プリオン蛋白質の検出を行っている。これらの結果が出揃うと、本研究の目的であるプリオンの侵入門戸が実験レベルで明らかになると思われる。
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