研究概要 |
申請者らは、これまでラット肝臓細胞質画分から分子量14,000の新規な蛋白質(過塩素酸可溶性蛋白質:PSP)を発見し、その一次構造と機能を明らかにしてきた。本蛋白質は、136個のアミノ酸から構成されており、分子量14,149daltonと計算された。またホモロジー検索により一次構造が大腸菌からヒトに至るまで高度に保存されていることが明らかにされた。本研究では、まずラット脳からPSPを精製しその性質について検討した結果、ラット脳PSP(B-PSP1)の分子量とアミノ酸配列はラット肝臓PSP(L-PSP1)と全く一致した。大脳や小脳をはじめ12ケ所の脳部位における発現を検討した結果、全ての部位のグリア細胞において発現していた。また、B-PSP1の発現は1日目から60日まで成長に伴って増大したが、その発現はグリア細胞のマーカー蛋白質であるGFAPより遅く、グリア細胞の分化因子というより細胞内での機能に関与していることが示唆された。一方、ラット腎臓尿細管由来の培養細胞であるNRK-52E細胞の増殖に及ぼすK-PSP1の発現を検討した結果、増殖時にはK-PSP1の発現が低く、定常期には発現が高くなることが明らかにされた。またK-PSP1の発現は細胞内における蛋白質合成活性と逆の関係を示した。更にNRK-52E細胞でK-PSP1を大量発現させた結果、細胞の増殖を抑制することが明らかにされた。これらの結果は、PSPの発現が細胞の増殖と関連していることを示している。
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