1.ラット遠位結腸での弛緩のメディエイターさであることが示されているPACAPの働きの詳細を調べて次の知見を得た。 (1)PACAPはラット遠位結腸でその受容体であるPAC1受容体に働いて、small conductance Ca^<2+>-activated K^+channel(SK channel)を開口して、細胞内Ca^<2+>を低下させて弛緩を起こしている。 (2)SK channelは現在四種類に分類されているが、ラット腸管でSK3の存在を確認した。腸神経と関連して存在し、平滑筋には発現していなかった。 (3)SK channelの存在を詳細に検討したところ、神経細胞やグリアには存在せず、カハールの間質細胞に発現していることが分かった。その結果、カハールの間質細胞と抑制性伝達への関連が示唆された。 2.神経ペプチドの一つであるオレキシンの腸での抑制性伝達への関わりを調べた。マウス小腸でのオレキシンの役割について以下の知見を得た。 (1)マウス小腸の縦走筋は外から適用したオレキシンに反応して、弛緩とそれに続く収縮を起こした。収縮はアセチルコリンを介していることが分かった。 (2)電気刺激による神経性の弛緩の約半分がオレキシンを介していることが分かった。またオレキシンは腸神経に働き、一酸化窒素の産生を介して弛緩を起こすことが分かった。 3.一酸化窒素の弛緩の細胞内機序を調べ、ラット近位結腸で主として小胞体膜に存在するCa^<2+>-ATPaseを活性化し、細胞質での遊離Ca^<2+>を減少させて弛緩を生じることが分かった。 4.その他、腸運動に関わる小胞体内のCa^<2+>の役割についての検討や、消化管の働きに関わる内向き整流性K^+ channelの存在を調べ、後述の論文の成果を得た。
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