研究課題/領域番号 |
12660277
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
及川 伸 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (40295895)
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研究分担者 |
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (50295896)
竹花 一成 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (80137413)
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キーワード | 脂肪肝牛 / インスリン抵抗性 / TNFα / 絶食 |
研究概要 |
乳牛の脂肪肝は周産期疾患の主要な病態である。最近、脂肪肝において、インスリン抵抗性を示す牛が散見され、生産性を著しく阻害している。マウス等において、TNFαがインスリン抵抗性に中心的役割を果たしていることが報告されてる。しかし、産業動物の領域においてこの分野に関する研究はほとんどされていない。したがって、今回、本疾病の病態解明の基礎的研究として、実験的に成雌牛5頭に4日間の絶食をさせ、脂肪肝の作出を試みた。そして、肝の脂肪化の進展に伴うインスリン抵抗性を評価するとともに、血清TNFα濃度および各種血清成分値との関連を検討し、さらには肝細胞の形態学的な分析を行い以下の結果を得た。 1.肝トリグリセリド(TG)含量は、絶食終了時に平均で2.6倍と明らかな増加を示し、肝の脂肪化が認められた。また、血清遊離脂肪酸(FFA)濃度は絶食とともに著増し、再給餌後速やかに絶食前の値へ戻った。 2.インスリン刺激試験では、肝の脂肪化の進展に伴い、インスリン抵抗性の増大が認められた。また、この抵抗性と血清FFA濃度および肝TG含量との間に有意な正の相関が認められた。 3.血清中TNFα濃度は、絶食によって明らかな変化を示さなかった。 4.肝細胞の直径は、絶食終了時に有意に増加した。肝の超微形態学的分析では、絶食により類洞内皮細胞下基底膜の肥厚が認められた。 以上より、絶食が脂肪肝誘導のひとつの有効な実験系であることが示唆された。今回示されたインスリン抵抗性と血清中TNFαとの間に明らかな関連が認められなかったことから、今後、肝中のTNFα含量を分析する必要があると考えられた。一方、インスリン抵抗性の成立にFFA濃度および肝TG含量が緊密に関与していることが示めされた。また、脂肪化に伴う類洞内皮細胞下基底膜の肥厚は、何かしらの機能亢進を示しており、今後インスリン抵抗性との関連性を検討したい。
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