新生血管に於ける血管内皮細胞・周細胞質相互陥入の出現と、両細胞に於ける血管新生制御に関連した因子及び同因子遺伝子の発現との関連性ついて、三次元電顕免疫学組織化学的・分子生物学的に検討することから、上記構造の形成に関与する因子と、同構造部を関係する血管新生制御因子を検討し、同構造が血管新生抑制をどの様制御しているかについて解明することを目的とした。昨年の検討から、アクチン系線維形成関連遺伝子の発現と、血管内皮細胞・周細胞質相互陥入の出現の間に相関関係が考えられた。年次計画にそって本年度は、実験肉芽組織をラットで作製した。作成法は過去の本研究者によって報告されているWakui et al.:Microvascular Research 46 19-27 (1993)。実験肉芽組織内の新生毛細血管の血管内皮細胞・周細胞質突起相互陥入の増減を検討したところ、10日後の成熟傾向を示す新生血管で最大値を示した。上述した肉芽組織は、シリコンスポンジの空間に新生毛細血管とマクロファージのみで構成されていた。この肉芽組織から、poly(A+)RNAを抽出しRat Micro Array用チップにハイブリダイズしAtlas cDNA Expression Arrayを作製し特異的mRNAの発現を検討したところ、幾つかの遺伝子種の発現が血管内皮細胞・周細胞質相互陥入の出現上昇期に認められた。そのなかから、Gammer-ActinとMyosin light chain 3に注目して、RT-PCR、Real time PCRで両者のmRNAの発現を確認したところ、特にGammer-Actinで有意な発現上昇が観察された。しかし、7日後、14日後の肉芽組織では発現は減少していた。現在、アクチン系線維形成関タンパクに対する抗体を作製が終了したので、分子生物学的検討から得られた情報と、三次元電顕免疫学組織化学的検討からの情報を解析している。
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