研究概要 |
本研究者は、一貫して、新生血管内皮細胞と周細胞との間の細胞質突起相互陥入構造の超微形態とその機能について、三次元電顕免疫組織化学的・分子細胞生物学的な検討を行ってきた。血管新生なくして腫瘍の進展、増大は認められない。すなわち、血管新生を人為的に制御することができれば、癌を含めた多くの疾患の脅威から生体を解放することができる。過去の検討から、新生血管内皮細胞と周細胞との間の細胞質突起相互陥入が、血管新生制御機構で特に血管新生抑制に深く関係するという新仮説を提唱した。 新生血管に於ける血管内皮細胞・周細胞質相互陥入(Endothelial-Pericyte Interdigitation(EPI)の出現と、両細胞に於ける血管新生制御に関連した因子及び同因子遺伝子の発現との関連性ついて、三次元電顕免疫学組織化学的・分子生物学的に検討することから、EPIの形成に関与する因子と血管新生制御因子を検討し、EPIが血管新生抑制をどの様に制御しているかについて解明することを目的とした。 ラット実験肉芽組織、実験腫瘍組織を対象にEPI増加時に発現する遣伝子をMicroArray法で検出後、同タンパクの発現及びmRNAの発現を三次元電顕免疫組織化学法とISH法とで検討した。その結果、血管新生因子(VEGF,bDGF,PDGF)、血管新生抑制因子(TGFβ)、細胞骨格形成因子(CamKll,Cathepsin,γactin等)36遺伝子の解析を行ったが、TGFβのみがEPIと関連したが、他は全てNegative dataであった。この原因は組織全体を解析したことから、血管構成細胞以外の線維芽細胞・マクロファージ肥満細胞等が発現する遺伝子のBiaseによるものと判断された。
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