研究概要 |
近年、相次いで新型ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)H型、G型、1型の存在が報告された。これら新型SEの診断方法の確立を目的とし、以下の研究を行った。 A. 新型エンテロトキシン(SE)の大腸菌発現系確立と抗SE血清の作成 SEH,SEG,SEI遺伝子を発現ベクターpGEX-6P-1にクローニング、大腸菌に導入して大量発現系を確立した。この系を用いて精製組換え型SEG、SEHおよびSEIを調製し、これを抗原としてウサギに免疫し、特異抗血清を作製した。これらの抗血清を用いてSandwich ELISAによるSEG, SEHおよびSEI検出法、定量法を確立した。 B.PCR法による毒素遺伝子検出法の確立 SEG、SEHおよびSEI遺伝子を検出するためのPCRプライマーを設計・合成し、multiplex PCRにより、同時にSEG、SEHおよびSEI遺伝子を検出する系を確立した。 C. S. aureusのSE遺伝子保有状況と毒素産生性の検討 上記のPCRとSandwlch ELISAを用い、食中毒由来、健康ヒト由来、ウシ乳房炎由来およびウシ生乳由来S. aureusのSE遺伝子保有状況とSEG, H, Iの産生性を検討し、SEH遺伝子保有菌株はSEHを産生するが、SEG, SEI遺伝子保有菌株ではSEG, SEI産生能が低いことを明らかにした。 D. Suncus murinusにおけるSEA-SEIの嘔吐活性の検討 大腸菌発現系を用いて調整したSEA-SEIの嘔吐活性を、トガリネズミ(Suncus murinus)を用いて検討し、全ての毒素が嘔吐活性を不すことを明らかにした。 E. 新型エンテロトキシン遺伝子の検索 SEA-SEI遺伝子を持たない食中毒由来株の遺伝子解析を行い、SEGに相同性を有する新型エンテロトキシン遺伝子を同定し、SEPと命名した。SEPを大腸菌で発現し、これを抗原として特異抗血清を作成し、Western blotを行うことにより実際にSEPが産生されていることを証明した。
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