昨年度実施したハト心臓の形態計測の結果から、レースバトの成鳥(1〜10歳)は同一種であるドバトの成鳥に比べて心臓重量/体重比で16.8%、左心室内腔面積で29.7%、心筋細胞の長さで18.1〜19.0%上回っており(いずれもPく0.001)、レースバトにみられるスポーツ心臓(生理的心肥大)の本態は遠心性心肥大の範疇に属するものであることが明らかになった。この結果を受けて本年度は、レースバトのスポーツ心臓が遺伝的に備わっている形質であるのかどうかを検討する目的で、3、6および9か月齢のレースバト19羽(雄9羽・雌10羽)とドバト16羽(雄9羽・雌7羽)について心臓重量/体重比の算出ならびに心筋細胞の長さの計測を行った。体重、心臓重量、心臓重量/体重比ならびに心筋細胞の長さは、前年度実施した成鳥での方法に準じて計測・算出した。本検索の結果、レースバトがドバトを心臓重量/体重比に関して3、6および9か月齢でそれぞれ16.7%、15.3%、16.4%上回っていること(いずれもPく0.01)、また心筋細胞の長さに関して16.2〜20.1%上回っていること(いずれもP<0.001)が明らかになった。このように、レースバトとドバトとでは両者が同一種であるにもかかわらず、成長段階ですでに心臓重量/体重比と心筋三細胞の長さに有意な差が認められたことから、レースバトは長年の選抜・改良の歴史の中で飛翔により適した種として遺伝的に確立され、そのスポーツ心臓は生まれながらにして備わっている形質であることが示唆された。
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