研究概要 |
本研究では疾患時における急性期糖蛋白の糖鎖構造の質的変動を解析することにより,その病態発生あるいは免疫防御機構における作用を解明することを目的として,本年度はそのモデルとなる白血病牛あるいは健康牛のa1酸性糖蛋白(a1AGP)を分離精製し,モノクローナル抗体の作製と牛L-selectinの遺伝子クローニングとin vitroでの蛋白発現を試みた. 1.a1AGPの分離とモノクローナル抗体の作製 (1)分離精製:健常牛および白血病牛から,イオン交換カラムクロマトグラフィーおよび免疫吸着法を用いてa1AGPを分離した. (2)モノクローナル抗体の作製:精製a1AGPをマウスに免疫した後,脾細胞を採取してミエローマ細胞と融合し,抗体活性のあるクローンを限界希釈法によりクローニングした.その結果,3つのクローン(IgMクラス,κ鎖)が得られ,何れもWestern blot法で牛a1AGPを認識するものであった.また,a1AGPをendoglycosidase Fで処理して糖鎖を除去した後,Western blot解析を行ったところ,これを認識できないことから,本法により得られたMabは糖鎖結合領域を認識するものと考えられた. (3)モノクローナル抗本を用いたELISA法:本モノクローナル抗本を用いて直接吸着法を用いたELISAにより,血清a1AGPの濃度測定を試みたところ,0.1μg〜10μgの範囲で測定可能であった. 2.牛L-selectinの遺伝子クローニングと発現 (1)牛L-selをコードするcDNAをリンパ球mRNAを用いてクローニングした.牛L-selのORFは1110bpで,370aaをコードし,38aaのシグナルペプチドを含んでいた.これを用いて大腸菌で発現したところ,不溶性となったが,バキュロウイルス発現系では膜蛋白としで発現し,抗体と良好な反応性を示した.
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