研究概要 |
本研究では疾患時における急性期糖蛋白の質的変動を接着分子結合能の点から解析し,種々の疾患あるいは疾患モデルにおける病態を把握し,診断・治療に役立てることを目的とし,以下について検討した. 1.α1酸性糖蛋白(α1AGP)における糖鎖構造の変動 まず,Concanavalin Aに対するα1AGP糖鎖結合能について検討したところ,正常牛のものでは強い結合能を示す2分画しか認められないのに対し,白血病牛のものでは第2分画の上昇とより結合能の低い第3分画および全く示さない第4分画の出現が認められた.このことは糖鎖構造の質的変動を示す結果であり,ここで注目しているSialyl Lewis X(SleX)抗原の付加の変動が推察されるため,抗体を用いて検出を試みたところ,正常では反応性は弱く,白血病では上昇する可能性が示された.この定量性については詳細に検討する必要性があるものの,新たな測定系確立の可能性が示された.また,E-selectinとの結合性についても同様の所見が得られた. 2.α1AGPのリンパ球に対する機能解析 α1AGPは牛リンパ球や好中球に対して抑制活性を示すが,遺伝子レベルでの詳細な報告はないため,基礎的研究としてリンパ球におけるサイトカインmRNA発現にっいて検討した.ConA刺激ではIL-2 mRNAでは個体により種々の反応性がみられたが,個体差があるもののIL-4 mRNAの低下およびIFN-gの上昇が観察された.これらの個体におけるα1AGP濃度には差がみられ,このα1AGPはリンパ球膜上に存在することから,本蛋白の関与がin vivoで既に影響を及ぼす可能性が示された.
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