研究概要 |
環境発生毒性モデルであるゼブラフィッシュ初期胚に環境ホルモンであるダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin : TCDD)を暴露し、中枢神経のアポトーシスおよび頭部顔面奇形を観察し、その発生機序を考察した。さらに有機スズによる循環毒性についても検討した。 1.TCDD暴露により中脳背側部のアポトーシスが誘発された。この毒性発現にはarylhydrcarbon受容体(AHR)を介したチトクロームP450 1A(CYP1A)の誘導と酸化ストレスが関与することを実験的に明らかにした。さらにゼブラフィッシュのCYP1AのcDNA配列を初めて報告し、その発現の発生過程を特異抗体染色と比較した。 2.TCDDにより下顎の低形成が起こった。局所循環量を測定することにより、頭部や下顎原基において血流が抑制されるかなり以前に下顎の低形成が起こること、AHRが下顎原基に高度発現していることより、下顎原基に対する直接作用であることを示唆した。さらに、下顎原基にソニックヘッジホッグ(shh)とその受容体が高度に発現して下顎の成長に関与していること、下顎原基におけるshh発現がTCDD処置により選択的に消失することを初めて明らかにした。 3.有機スズ暴露によりゼブラフィッシュにおいて、循環障害による浮腫などの毒性発現が認められた。 このようにゼブラフィッシュはTCDDをはじめとする環境ホルモンが脊椎動物に与える影響を調べるための解析力の高い脊椎動物モデルであることが明らかになった。
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