研究概要 |
昨年度の実験で春機発動期の異常を誘起した3,'3,4,'4,5-pentachlorobiphenyl(PCB126)10μg/kgあるいはその1/10量の1μg/kgを妊娠15日(G15)のラットに、また2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)曝露によって出生児の卵巣に加齢性の変化が促進されることが報告されているG8のラットにそれぞれ経口投与して出生子をえ、外陰部の観察を行うとともに春機発動を観察し、さらに性成熟後の生殖機能を検討した。 その結果、外陰部の奇形は10μg/kg曝露を受けたラットの出生児のみに観察され、病変の程度はG8曝露群と比べて、G15曝露群の方が重度であった。外陰部奇形については、さらに奇形発生の感受期を知るために、分娩後1日の母ラットに100μg/kgのPCB126を経口投与して離乳まで哺育させたが、奇形は認められなかった。 以上から、PCB126による外陰部奇形発現の感受期は、妊娠中期ないし末期に存在するものと推察された。この実験では膣開口日齢に曝露の影響は認められなかったが、曝露を受けた妊娠日にかかわらず初回排卵数が10μg/kg曝露群において減少した。性成熟後は、8週齢から約2週間にわたる性周期観察、10週齢における排卵検査、無処置雄動物との交配のいずれにも曝露の影響は認められなかった。また、交配により得られた出生児の春機発動にも異常は認められなかった。いっぽう、18週齢から再び約2週間にわたり性周期を観察したところ、G15、10μg/kg曝露群の動物に連続発情が認められ、卵巣重量が低下していた。30週齢では観察例数が限られていたが、G8およびG15のいずれの曝露日においても10μg/kg曝露群の動物に卵巣重量が低いものが認められた。 以上の成績をまとめると、雌ラットに対するPCB126の経胎盤および経乳汁曝露により、雌の出生児は、特に春機発動期に卵巣あるいは視床下部/下垂体系の機能分化が影響を受けるが、性成熟期の生殖には異常は認められない。しかし、PCB126曝露群では加齢の進行がやや促進される傾向が認められた。 生子を用いて再度実験を行い、再現性を確かめるとともにその機序を解明する必要がある。
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