研究概要 |
実験I : SD系8週齢雌ラットを、対照群(コーン油)、1μg/kg投与群および3μg/kg投与群の3群に分け、コプラナーPCBsの中で最も毒性が強い3,3',4,4'5,-pentachlorobiphenyl(PCB-126)(TEF:0.1)ないしコーン油を1日1回、交配前2週間から分娩後20日まで経口投与したところ、3μg/kg曝露群では、膣開口の日齢が有意に遅延し、排卵数も少なかった。実験II:妊娠15日(G15)のラットにコーン油,PCB126を10あるいは100μg/kg経口投与し、出生児を生後21日まで母動物に哺育させ観察したところ、暴露群で膣開口が遅延し、排卵数も有意に少なかった。また,100μg/kg曝露群では,初回排卵と膣開口日の非同調現象が見られ、排卵日における子宮重量が低下した。また、eCG投与による誘起排卵に対する反応から、PCB126曝露動物では春機発動における卵胞発育抑制が示唆された。さらに、実験I, IIでPCB投与群の雌の外尿道口〜膣間正中部に裂隙形成(尿道下裂)が認められた。実験III : PCB126を10μg/kgあるいは1μg/kg、G15ないしG8のラットにそれぞれ経口投与した。その結果、尿道下裂は、10μg/kg曝露を受けたラットの出生児のみに観察された。別のラットの分娩後1日にPCB126を経口投与して哺育させたが、雌出生子に奇形は認められなかった。また、膣開口日齢に曝露の影響は認めなかったが、初回排卵数が10μg/kg曝露群で減少した。10週齢における排卵検査、無処置雄動物との交配のいずれにも曝露の影響は認められず、また、交配により得られた出生児(F2)の春機発動にも異常はなかった。いっぽう、18週齢から約2週間の性周期観察で、G15、10μg/kg曝露群の動物に連続発情と卵巣重量の低下が認められた。30週齢では、10μg/kg曝露群の動物に卵巣重量が低いものが認められた。以上より、PCB126の経胎盤/経乳汁曝露により、雌の出生児は春機発動期に卵巣あるいは視床下部/下垂体系の機能分化が影響を受けること、PCB126曝露群では加齢の進行が促進されるが可能性が示唆された。
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