研究概要 |
シロイヌナズナ染色体DNAからクローニングした過酸化リン脂質グルタチオンペルオキシダーゼ様遺伝子プロモーター領域をβ-グルコニダーゼ遺伝子上流に連結した。本融合遺伝子をパーティクルガンによりエンドウ根に照射して25℃一昼夜MS培地で培養した結果、β-グルコニダーゼ活性を示す青色スポットを認めたことから、本遺伝子断片はプロモーター機能を持つことが明らかとなった。次に、50mM,100mM NaClを含むMS培地で培養してところ、β-グルコニダーゼ活性に差を認めることができず、過酸化リン脂質グルタチオセペルオキシダーゼ様遺伝子プロモーター領域は塩ストレスにより転写活性の誘導が起こらないことが示唆された。 過酸化リン脂質グルタチオンペルオキシダーゼ様遺伝子のORF領域を大腸菌発現ベクターpET15bに挿入したプラスミドで形質転換した大腸菌クローンを作出した。クローン無細胞抽出液について過酸化リン脂質グルタチオンペルオキシダーゼ活性を測定した結果、tert-butyl hydroperoxide, cumene hydroperoxide, hydrogen peroxideの還元活性を認めることができなかった。次に大腸菌クローンをNaCl含有LB培地で生育させた結果、3%,NaCl含有LB培地では、クローンの生育は1%NaCl含有LB培地の場合とほぼ同じであったが、コントロールの生育は1%NaCl含有LB培地の時よりも悪くなった。5%NaCl含有LB培地では、コントロールはわずかしか生育できず10時間後には凝集したが、クローンは生育することができ、14時間後は1%NaCl含有LB培地時の約45%の生育度を示した。7%NaCl含有LB培地では、コントロールは生育することができなかったが、クローンはわずかながら生育することができ、4時間後は1%NaCl含有LB培地時の約23%の生育度を示した。以上の結果、植物由来過酸化リン脂質グルタチオンペルオキシダーゼ様遺伝子は酸化ストレスを引き起こす塩ストレスに対して抵抗性を付与することが明らかとなり、植物における酸化ストレス/塩ストレス抵抗性に関与するシステムの構成要因であることが示唆された。
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