研究概要 |
トウモロコシにおいてアピレースの存在を調べる一方で、アラスカエンドウのアピレースの大量精製を行い、結晶解析に必要な基礎データを収集し結晶化を試みた。協力者の畑安雄助教授(京都大学)による結晶化実験で、分子量の分散が観察された。このアピレースのペプチド構造並びにこれをコードする遺伝子とその転写産物の多様性を調べたところ、多様なリン酸化や糖鎖、ミリスチン酸化サイトなど、タンパク質分子の多様化につながるモチーフが多数存在するとともに非常によく似た2つの遺伝子産物の存在も明らかとなった(論文1)。そこで次の3つの選択肢:1.そのまま結晶化を行う、2.アイソタイプを分離する、3.単分散な発現タンパク質を生産する、が提案された。 これらをさらに検討するため、米国の共同研究者のもとでMild Toff Massにより、アピレースの基本的な分子型を調べた。その結果、4つの分子種が存在し、これらはすベて同じアピレースであることが確認されたが、互いに異なった分子修飾をうけていることも明らかとなり、現在詳細を解析中である。また、精製タンパク質画分を2次元電気泳動で分析すると、pI6.1,6.3,6.6の3種にわかれ、pIが6.1のものはpI6.3のものよりわずかに分子量が大きいことも判明し、またこれらの存在量はpI6.3のものが1番多いが他の2つとの差はあまり大きくなかった。これらのことより選択肢1は放棄し選択肢2と3を検討中であり、予備的には3つのアイソタイプをアニオン交換カラムにより分離できることがわかった。これらの知見は現在論文にまとめており、また今年のProvidence(Rhode Island,USA)で開かれる米国とカナダ合同の植物生理学会大会で発表する。また、このような研究が、植物細胞質の遺伝子発現のダイナミズム(Cytomics)の解明に重要であることを論じた論文を今年1月に出版した(論文2)。
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