研究概要 |
1.糸状菌Penicillium sp. TN-88株のエンド型イヌリナーゼ遺伝子のORF(1,545bp)は介在配列を含まず、N末端アミノ酸25残基からなるシグナル・ペプチドと490残基の成熟タンパク質をコードした。成熟タンパク質には3個のシステイン残基、10ヶ所のN-グリコシル化部位が存在した。本遺伝子は酵母Sacharomyces cerevisiaeで発現し、その推定アミノ酸配列は、糸状菌Aspergillus niger とPenicillium purpurogenum起源の同酵素とそれぞれ72%と85%が同一であった。β-フルクトフラノシダーゼ・スーパーファミリーの分子系統樹から、糸状菌エンド型イヌリナーゼは細菌レバナーゼに近縁であると推定した。 2.黒麹菌Aspergillus niger変異株817の培養ろ液からエンド型イヌリナーゼを部分精製し、アミノセルロファインに共有結合により固定化した。固定化酵素をカラムに充填し、5%(w/v)イヌリン溶液から重合度3〜5のイヌロオリゴ糖を連続生産した。各種腸内細菌による試験管内資化性試験の結果、イヌロトリオース,イヌロテトラオースは大腸菌、クロストリジウム属細菌では資化されず、ビフィズス菌により選択的に利用された。 3.A. niger野生株No.12の培養菌体を石英砂で破砕し、その抽出液から細胞内エキソおよびエンド型イヌリナーゼをDEAE-セルロファインA-500、続いてセファデックスG-100およびG-200クロマトグラフィーによりそれぞれ電気泳動的に単一に精製した。エキソ型イヌリナーゼP-IIの比活性は、イヌリンに対して6.6U/mg、ショ糖に対して22U/mgであった。エンド型イヌリナーゼP-IIIはイヌリンのみに作用し、比活性は108U/mgであった。エキソ型イヌリナーゼP-IIが47kDa、エンド型イヌリナーゼP-IIIが56kDaであった。ゲルろ過で測定した分子量は、エキソ型イヌリナーゼP-IIとエンド型イヌリナーゼP-IIIの最適pHはそれぞれpH5.0とpH5.3、最適温度はそれぞれ55℃と45℃であった。両酵素ともMn^<2+>で賦活化され、Ag^+、Hg^<2+>、p-クロロメルクリ安息香酸で失活した。エキソ型イヌリナーゼP-IIとエンド型イヌリナーゼP-IIIのイヌリンに対するMichaelis定数(Km)は、それぞれ5.8mMと0.80mMであった。
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