研究概要 |
本研究では、動物の成長および運動に伴い生じる物理刺激を外部シグナルとした衛星細胞の活性化,機構を予想し、これをin vivo伸縮実験モデルを用いて検証することを計画した。このため最終年度では、初年度で作出した「骨格筋に物理刺激を負荷できるin vivo伸展モデル」および「衛星細胞の活性化を検出するブロモデオキシウリジン(BrdU)のin vivo標識法」を用いて、物理刺激による衛星細胞の活性化を検証すると共に、その分子機構を追究した得られた成果の概要は以下の通りである。S.D.種雄ラット(9-10か月齢)の左側後肢の体側側にある内転筋に最長で2時間の伸展刺激を持続的に負荷した。伸展時間に依存して活性化の指標であるBrdUの細胞内取り込みおよび細胞収量が有意に増加したことから、伸展刺激をトリガーとして衛星細胞が活性化することが確認された。次に、物理刺激による活性化の分子機構を調べるため、伸展刺激によってHGF(肝細胞増殖因子)が筋肉組織中で遊離するか否かを調べた。先ず、2時間の伸展刺激を負荷した筋肉をPBS中で1時間静かに振とうし得られた抽出液(SME)にHGFが存在することが、抗HGF抗体によるwestem blottingにより分かった。またSMEを培養液に添加するとSME濃度依存的に衛星細胞の活性化が誘起され、またSMEを予め抗HGF中和抗体(HGFに結合しその生理活性を中和する抗体)で処理すると抗体濃度依存的に生理活性が消失した。対照として伸展刺激を加えていない右側後肢の筋肉から同様に得た抽出液には生理活性はなかった。従って、骨格筋に物理刺激が負荷されると基底膜に結合保持されていたHGFが遊離し、これが特異的受容体c-metに結合すると細胞内シグナル伝達系を介して衛星細胞の活性化(DNAの複製)が誘起されるという分子機構が推定された。
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