研究概要 |
水生光合成生物は,無機炭素を細胞内へ能動的に輸送する機構(無機炭素濃縮機構;CCM)をもつ。このCCMは,無機炭素の供給が不足すると誘導され,逆に無機炭素が十分供給されると抑制される。CCMの制御に関わるCO_2センサーやシグナル伝達遺伝子,転写調節を受ける遺伝子群の全体像を解明する目的で今年度は,以下の点を明らかにした。 (1)CO_2濃度変動に応答する遺伝子の種類とその機能を,かずさDNA研究所と共同でクラミドモナスEST情報を明らかにした。特に低CO_2条件と高CO_2で細胞を培養してRNAを抽出し,それぞれ12,969個と13,450個のcDNAについてその5'-末端の配列決定を行い,EST情報を得た。それぞれの培養条件特異的なESTは,2665個(低CO_2)と1879個(高CO_2)存在した。 (2)EST情報を分類し,2回以上ESTとして配列が認められたクローン3,363個と1回のみの93個を加えた3,456個のcDNAについてPCRを行い,フィルター作製ロボットBiomek2000を用いてcDNAマクロアレイフィルターを作製した。このフィルターを用いて,CO_2シグナル伝達因子CCM1のターゲット遺伝子をcDNAマクロアレイで80個同定した。 (3)低CO_2条件に順化できない変異株C16の変異原因遺伝子Ccm1を単離した。cDNAから推定されるタンパク質は、ジンクフィンガードメインをもち親水性が高い。Ccm1は,低CO_2に順化できない別の変異株cia-5の変異を相補した。cia-5の変異では、ジンクフィンガードメインのHis-54がチロシンに変化していた。また、Ccm1の発現は、CO_2や光に影響を受けず、構成的であったので、CO_2シグナルの伝達には、CCM1タンパク質の修飾が重要である可能性が示唆された。
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