研究概要 |
緑藻クラミドモナスは、CO_2欠乏、強光等の環境ストレスに対し、無機炭素濃縮機構(carbon-concentrating mechanism ; CCM)を作動させて、順化することができる。CO_2欠乏条件では細胞表層炭酸脱水酵素遺伝子Cah1、ミトコンドリア炭酸脱水酵素遺伝子Mca、葉緑体包膜タンパク質遺伝子Ccp1等のCCM関連遺伝子が誘導される。CO_2欠乏環境への順化には、細胞がCO_2の不足を感知し、これを環境ストレス情報として伝達し、特定の遺伝子発現を制御する機構の存在が示唆されている。 本研究では、高CO_2要求性変異株C16およびこれを相補する核調節遺伝子Ccm1(Fukuzawa et al. PNAS 2001)を単離した。Ccm1は高CO_2(5%)、低CO_2(0.04%)条件下ともに構成的に発現していた。Ccm1遺伝子にコードされる亜鉛フィンガーモチーフを構成するHis-54がCCM関連遺伝子の調節に必須であることを明らかにした。調節因子CCM1に制御される遺伝子の種類を明らかにする目的で、10,368種のクラミドモナスESTクローンを含むcDNAマクロアレイを作成した。高、低CO_2条件で培養した野生株、低CO_2条件で培養したC16株のメッセンジャーRNAをそれぞれ^<33>P-dCTPで標識し、cDNAマクロアレイ解析を行った。59種の低CO_2誘導性遺伝子がC16株で誘導されず、CCM1の制御下にあることを示した。各遺伝子の誘導の時間依存的な解析から、低CO_2誘導性遺伝子の中には、光呼吸関連遺伝子およびイオン輸送体遺伝子が含まれていた。
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