分裂酵母のRasはフェロモンの情報伝達系に関与し、ras1欠失株は有性生殖不能になる。これまでに高発現することによりrasの有性生殖不能をバイパスする遺伝子としてbyr2やbyr1が単離されてきている。本研究では、Rasの周辺や下流にはまだまだその調節に関わる新しい因子が存在すると考え、遺伝学的なアプローチをとった。その中で、我々が単離した有性生殖が昂進しているsam変異の内2株はras1欠損に対して優性の性質を示す。sam変異のうち優性1株より、ゲノムライブラリーを構築し、ras1欠損株の胞子形成不能をバイパスできる遺伝子でsla1と呼ぶLaタンパク質のホモログ遺伝子を単離した。Laタンパク質はヒトの自己免疫疾患の抗原として知られ、RNAの安定化や翻訳制御に関与していると考えられる。興味深いことにこのsla1はC末端コード領域を欠損しているときに有性生殖への移行への活性を示し、その領域にはNLS(核移行配列)が存在していることが判明した。このNLSを欠損したものは細胞質へ移行し、全長のSla1は核へ移行する。つまり核移行の有無が活性に大きく影響を及ぼすことを見いだした。さらにSlaのドメイン解析を進めると、Sla1の機能部位は中央部のRRMのドメインであり、RRMのドメインを発現させると有性生殖を高頻度に誘導し、ハプロイドマイオシスを誘導することを見いだした。
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