各種知覚神経終末に随伴するシュワン細胞の特異な立体形態を、水酸化ナトリウム浸軟法を応用した走査電顕と通常の方法に従った透過電顕によって解析し、その機能的意義を考察した。一部の試料については、シュワン細胞を同定するため、マーカー物質であるS-100蛋白に対する抗体を用いた免疫組織化学を行なった。観察対象として、それぞれ異なる機械的刺激に反応することが知られる、ラットの歯根膜ルフィニ終末と洞毛周囲槍型終末、サル手掌皮膚のマイスナー小体を選んだ。どの知覚終末も、膨らんだ軸索終末の両側を2枚のシュワン細胞の鞘が包む、軸索-シュワン細胞複合体(Munger & Ide 1987)を構造単位として含んでいた。終末シュワン細胞の細胞体は、常に、この複合体から細長い首をもって丸く突出していた。終末シュワン細胞は、軸索終末に随伴する鞘突起の他、軸索から離れて周囲結合組織中に伸び出す、特殊な小突起を多数もっていた。特殊突起の形態は、それぞれの種類の知覚終末に特異的だった。ルフィニ終末では、樹枝状に分岐した神経終末の末端部から多数の舌状のシュワン突起が起こり、周囲の膠原線維に巻き付いた。洞毛槍型終末では、槍の先端から細長いシュワン突起が房状に伸びて、扁平な終足を外根鞘基底膜の結合組織面や周囲の膠原線維に接着させた。マイスナー小体のシュワン細胞の特殊突起は、鞘突起の辺縁に沿う数条の細長い微小ヒダに相当し、その間に、膠原細線維の小束が抱え込まれていた。どの場合でも、終末シュワン細胞の細胞体表面に、同様の特殊突起が少数ながらみられた。終末シュワン細胞は、特殊突起によって、それぞれの知覚小体を周囲組織に一定の法則で結合させ、適刺激が軸索終末の知覚受容部位に伝わるのを仲介すると考えられる。
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