各種知覚神経終末に随伴するシュワン細胞の形態とその発達過程を、とくに、細胞と周囲組織の接着に注目し、走査電顕と透過電顕を組み合わせた観察に基づく立体微小解剖と、シュワン細胞のマーカー物質S100β蛋白に対する抗体を用いた免疫組織化学によって、解析した。まず、ラットの歯根膜ルフィニ終末と洞毛周囲槍型終末、それに、サル手掌皮膚マイスナー小体を比較観察した。どの知覚装置の終末シュワン細胞も、丸い細胞体から薄板状の主突起を出して軸索終末を包んでいた。シュワン主突起は、さらに、知覚終末の種類に特異的な形態の細かい副突起をのばし、終末を一定のやり方で周囲組織に係留していた。外力による組織変形は、このシュワン副突起を介して軸索終末の刺激受容部位に伝播すると考えられる。次に、終末シュワン細胞の成熟過程を生後2-3週間の幼若ラット洞毛槍型終末で追跡したところ、副突起に似た形状の小突起を放射した、星型の未熟シュワン細胞が、槍型終末周囲の結合組織中に見出された。この細胞が主突起を広げて軸索終末を包み、終末シュワン細胞へと変化する過程で、小突起が徐々に退行し、その一部が副突起として残った。これらの観察結果は、知覚終末シュワン細胞の形態成熟に、軸索終末との近接が重要な役割を果たすことを示唆する。今後は、この細胞間相互作用に関わる信号物質や細胞接着分子の解析が必要と考えられる。
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