本研究では、排卵に向かう成熟卵胞と閉鎖する卵胞との構造上の違いを明確にし、さらに、大多数の卵胞を閉鎖させているにも関わらず、全く炎症性変化を伴わない卵巣の臓器特異性を形態学的に解明しようとした。果粒層細胞の退縮機構に関しては、初年度にあたる平成12年度に、明らかにした。本研究における本年度の成果はつぎのとおりである。 1.閉鎖するとみられる卵胞における卵細胞の退化・消滅の機序を明らかにするため、準超薄完全連続切片を作製し詳細に観察した結果、数個から数100個の細胞が透明帯を貫いて侵入し、これらの細胞が、変性し小片化した卵細胞を貧食することを確認した。 2.透明帯を貫通し卵細胞に接する細胞の微細構造が、卵丘細胞や果粒層細胞に類似すること、ギャップ結合により侵入細胞どうしが連結していることから、これらの侵入細胞は卵胞上皮細胞である可能性が高い。 3.透明帯を貫通する細胞のうち、極めてまれに好中球の存在を認めたが、マクロファージの存在を確認することはできなかった。 4.いわば閉鎖系とみられる卵胞の退縮機構と比較することを目的に、開放系とみられる卵管上皮細胞の代謝更新の機序を観察した結果、卵胞上皮と同様、アポトーシスに陥った細胞を正常な隣接する上皮細胞が貧食するとともに、アポトーシスおよびネクローシスに陥った上皮細胞が卵管内腔にそのまま排出される像を確認した。 以上の結果から、マウスの閉鎖卵胞は、アポトーシスに陥った果粒層細胞が同種の正常細胞による貧食され、また、変性した卵細胞も果粒層細胞により貧食され退化・消失することを明らかにした。この過程にマクロファージの関与は認められなかった。
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