細胞骨格系繊維構造は、真核細胞における細胞質の基本的構造であり、細胞を機械的に支持するとともに、運動、接着、情報伝達、発生など多様な生理機能に関与している。その機能の多くは細胞接着構造や形質膜裏打ちとの構造的な相互作用によって全うされる。この相互作用と分子構築を明らかにし、それぞれの機能を理解するために、骨格筋、平滑筋、神経周膜細胞に見られる形質膜機能的ドメインについて、電子顕微鏡技法に共焦点顕微鏡法や生化学約分析を組み合わせ、内在性膜蛋白質、裏打ち構造、細胞骨格系要素の相互関係を相関解析した。それにより、骨格筋細胞の細胞外基質ラミニンに連結する形質膜裏打ち蛋白質ジストロフィンとジストログリカンを中心とする連環軸の分子構築が明らかになった。また、平滑筋細胞の形質膜裏打ち領域、カベオラ領域それぞれについて電子顕微鏡による超微形態と共焦点顕微鏡による分子局在とを直接的形態学的に関連づけ、各々ジストロフィンなど、カベオリンなどが局在することを明らかにし、それぞれの役割を理解することができた。また、神経周膜のアクチン束とインテグリンなどを中心とする細胞接着構造との関連を調べることができた。さらに、この相互作用が発生現象において果たす機能についても解析するため、胚における細胞接着とその制御を分子生物学および細胞生物学的手法を用いて研究し、頭部領域決定遺伝子Otxによる細胞接着誘導や、体節形成に関与するプロトカドヘリンを見い出すことができた。
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