1.fyn遺伝子欠損マウスと野生型マウスの3週齢精巣の精細管の直径を比較した。その結果、fyn遺伝子欠損マウス精巣では113±13μm、野生型では123±13μmで、fyn遺伝子欠損マウス精巣の精細管径が有意に減少していた。また、精巣重量について調べたところ、3週齢および4週齢では野生型マウス精巣に較べて有意に減少していたが、成熟精巣では有意差が見られなくなった。 2.fyn遺伝子欠損マウスの精巣には、ectoplasmic specialization(ES)と呼ばれる、セルトリ細胞特有の接着装置に微細形態的な異常、すなわちアクチン細糸層における異常な小胞が見られる。その異常について計測するため、電顕標本を作製した。生後3週齢精巣では観察したESのうち66%(119/180)、成熟精巣では33%(48/145)が異常なESであった。また異常な小胞の数は3週齢に較べ成熟精巣で減少していた。 3.抗リン酸化チロシン抗体を用いて、野生型マウス精巣を免疫染色したところ、ESの存在する部位近辺に特に強い反応が見られた。fyn遺伝子欠損マウス精巣では、この免疫染色反応が弱かった。ESにはFyn蛋白も多く局在することから、FynがESにおいて何らかの作用を及ぼしていることが考えられる。 4.セルトリ細胞株TM4はFyn蛋白を発現している。そこでTM4を用いて二次元Western blot法により調べたところ、diethylstilbestrol(DES)を始めとするいわゆる内分泌攪乱化学物質を処理した場合、特定の蛋白のチロシンリン酸化が亢進することがわかった。チロシンキナーゼであるFynとの関連が示唆される。
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