研究概要 |
日本猿10頭20側とヒト2体4側を用い,頚部と胸部の交感神経系の形態学的検討、特に心臓神経(上頚・中頚・下頚心臓神経)の交感神経幹神経節からの起始様式について形態学的解析を行い,以下の結果を得た,(1)日本猿では,副中頚神経節は7側(上副中頚神経節は3側,下副中頚神経節は5側)に観察された。上副中頚神経節は心臓神経が起始するために分離した神経節で,下副中頚神経節は鎖骨下ワナ形成のために分離した神経節であると考えられる.(2)椎骨動脈神経節はヒトに特有なものである.(3)頚胸神経節は日本猿では下頚神経節と第1・2胸神経節,ヒトは下頚神経節と第1胸神経節で構成されており,その形成位置も頚胸神経節と中頚神経節ともにヒトは高位に存在する.(4)副中頚神経節から起始する中頚心臓神経はこれまでに報告がない.日本猿では上頚神経節から起始する上頚心臓神経は存在しない.下心臓神経は星状神経から起始する。また,ヒトになるに従い,心臓神経の交感神経幹からのが起始範囲は頭尾方向へ拡大する傾向がある。特に(3)の頚胸神経節の所見は犬の実験結果をヒトの所見と比較検討する上で非常に考慮すべき点と考えられる。 実験系は、血圧の上昇を指標として神経系と神経・内分泌系の2重制御機構の存在について犬を材料として用い、検討を行いつつある。血圧上昇の判定は大腿動脈の上昇として行い、実験終了後全例固定し肉眼解剖学的に交通枝と交感神経幹神経節との剖出したのち、交通枝の関係から脊髄レべルを同定しつつある。刺激部位は交通枝または交感神経節で、交感神経幹神経節刺激の場合は脊髄レベルを判断するには困難を伴う。その結果、10頭での概要は心臓神経を制御する胸部交感神経節レベルはT1SGが4頭,T2SGが10頭,T3SGが10頭,T4SGが8頭,T5SGが5頭であった。脊髄中枢は第1-第5胸髄が中枢とされた。
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